
『エスクァイア日本版』音楽担当が綴る、レビュー回顧。
弟5回はサニーデイ・サービスの『東京』です。
意図しないノスタルジック。
現在ではもうチェーン店「エクセシオール・カフェ」になってしまっていますが、
渋谷駅から代官山方面へ抜ける途中、246を横断する歩道橋を下りたあたりに、
かつて「マックスロード」という喫茶店がありました。
音楽ライターと打ち合わせをセッティングしようとすると、
「じゃあマックスロードで」と当たり前にその名が挙がる、そんな場所でした。
松本隆がそこで詞を書いていた、そんな逸話も聞こえてきました。
渋谷系という、実態はかなり曖昧ながらも強度があった90年代半ばの音楽流行には、
ポップスマニア的視点から、日本の過去の音楽に注目する流れがありました。
はっぴいえんど、シュガーベイブ、大滝詠一、細野晴臣、山下達郎。
70年代に生み出された彼らの音楽は、
当時の彼らが範とした洋楽音源に親しむようになったことで、
再度その魅力が認められるようになったわけです。
そしてそれらの音楽は、時間を超えて、街の情景の形成要素にもなりました。
例えばマックスロードでお茶をする自分の頭の中には、
「風をあつめて」が流れる、といった具合に。
こうした過去と今日がやや脈絡なく混ざりあっていく時代の気分の中で、
その状態を的確に表現した音楽が登場します。
サニーデイ・サービスの『東京』です。
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