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2009年04月21日

レビュー回顧〜手許に残ったCDについて。 その1



本誌音楽担当Sです。
こんな、雑誌が中断してしまうといった事態でもないと、
なかなか自分がやってきたことを振り返る機会はないものです。
そして、自分が関わってきた15年を振り返ってみると、
担当を離れていた時期があったものの、実に多くのCDを聴き、
紹介してきたことに今更ながら驚きます。

音楽の担当になりしばらくして気づいたのは、
仕事としてさまざまな音源に触れれば触れるほど、
プライベートで音楽を聴くのが億劫になるということでした。
このままでは音楽嫌いになってしまう、そんな恐れを感じたりもしました。
それでも、号を重ね、年を経るにつれて、
ラックのCDはどんどん増殖していきました。
安心したというか、自分の欲深さに呆れたというか。

当初はジャンル別になっていた自宅のラックも、
いまではすっかりごちゃごちゃです。
その中でも、比較的「手前」にあるものは、
やはり聴く頻度が高いのだといえるでしょう。
懐かしいタイトルも見えています。
ここではそんなCDを、時代をさかのぼりながら、
いくつか紹介していこうと思っています。

1994年の5月某日、
はじめて訪れたエスクァイア日本版編集部には、音楽が流れていました。
当時の音楽担当だったN氏が、編集部のBGMを担当し、
ひんぱんにCDをかけ替えていたのです。
どうも普通のチューニングではないベースの音に、
醒めた、それでいて程よい「ぬめり」を持った男性ヴォーカル。
そこに寄り添う野太いサックス。音と音の間に隙間があるものの、
それは決して散漫ではなく、むしろ緊張感が漂っています。
CDプレイヤー前のケースには「MORPHINE」の字が見てとれました。
『Cure for Pain』、モーフィーンのセカンドアルバムでした。

当時、アシッドジャズにハマり、クラブ通いをしていた人間にとっては、
そのサウンドは全く異質な「鮮度」をもって耳を捉えました。
音楽の構造としてロックのようであり、
アコースティックな音感はジャズにも通じ、
ヴォーカルのスタイルは詩人を連想させます。
パンクに似た衝動を感じさせるところもある。
要するに、当時の自分では判断不能の衝撃だったわけです。

2弦ベースとヴォーカルを担当するマーク・サンドマン、
主にバリトンサックスを使うデイナ・コーリー、
ドラムスとパーカッションを担当するビリー・コンウェイ
(デビューアルバム『Good』ではジェローム・デュプリー)の
変則3ピースバンド、モーフィーン。
彼らは当時「ロウ・ロック」などと呼ばれていました。
その後ブームとなる「ローファイ」と
関連づける見解もあったように記憶しています。
しかし、そのナラティヴなサウンドスケープは、
現在でもまったく輝きを失わない強度、そして独自性を備えています。

そういえば彼らはライヴもすごかった。
音数の少ない3ピースなわけですが、
圧倒的なグルーヴ感をもって客席を興奮で包んでいました。
ローランド・カーク真っ青の、
デイナのバリトン&バスサックス2本吹きには本当に驚いた。
マークの「詩人性」は、ライヴではより前面に出ていた気がします。

『Cure for Pain』の前のファースト『Good』は、
彼らの「本質」が露出しているようで、
セカンドとは別の意味で好きなアルバム。
3作目の『yes』は、グルーヴ感を増幅させ、
リスナーをぐいぐい引っ張っていく感じが魅力的です。
でも、個人的に印象に残っているのはやはりはじめて彼らを知ったセカンド。
今でもそのサウンドが、時折脳裏に響くことがあります。

4作目の『Like Swimming』で
RYKOレーベルからDreamWorksに移籍した彼らは、
アメリカでもメジャーシーンで活躍するようになります。
確か4作目は前の3作同様、
日本ではビデオアーツからリリースされたと思いますが、
その後の5作目はあまり記憶にありません。

彼らのことが記憶の片隅に追いやられつつあった1999年、
突如マーク・サンドマンの訃報が飛び込んできました。
ステージにて心臓発作で倒れたのでした。
その報に触れて、4枚のCDを数日聴きまくったことを覚えています。
そういえば彼らの来日時に取材をした際、
マークから名刺(!)をもらったことを、いま思い出しました。
あれはどこにいったのだろう。


「Cure for Pain」Morphine



DISCOGRAPHY
Good』Morphine


Cure for Pain』Morphine


Yes』Morphine

Like Swimming』Morphine


Morphine on Esquire
『エスクァイア日本版』1995年1月号
「Morphine on "21st Century Beatniks Session"」より。
インタビュー・文は森永博志氏、撮影は園木和彦氏。
スタイリングを担当した大口ヒロシ氏がドラムス、
ギターにルイズ・ルイス加部氏と花田裕之氏、
キーボードに篠原信彦氏を迎えた
豪華セッションのもと撮影された。










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posted by esky復刊応援コミッティ at 23:33 | Comment(0) | TrackBack(0) | 裏Esky Music/レビュー回顧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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