カテゴリ

2009年06月04日

レビュー回顧〜手元に残ったCDについて その5

31VV439WNNL._SL500_AA130_.jpg

『エスクァイア日本版』音楽担当が綴る、レビュー回顧。
弟5回はサニーデイ・サービスの『東京』です。


意図しないノスタルジック。

現在ではもうチェーン店「エクセシオール・カフェ」になってしまっていますが、
渋谷駅から代官山方面へ抜ける途中、246を横断する歩道橋を下りたあたりに、
かつて「マックスロード」という喫茶店がありました。
音楽ライターと打ち合わせをセッティングしようとすると、
「じゃあマックスロードで」と当たり前にその名が挙がる、そんな場所でした。
松本隆がそこで詞を書いていた、そんな逸話も聞こえてきました。

渋谷系という、実態はかなり曖昧ながらも強度があった90年代半ばの音楽流行には、
ポップスマニア的視点から、日本の過去の音楽に注目する流れがありました。
はっぴいえんど、シュガーベイブ、大滝詠一、細野晴臣、山下達郎。
70年代に生み出された彼らの音楽は、
当時の彼らが範とした洋楽音源に親しむようになったことで、
再度その魅力が認められるようになったわけです。
そしてそれらの音楽は、時間を超えて、街の情景の形成要素にもなりました。
例えばマックスロードでお茶をする自分の頭の中には、
「風をあつめて」が流れる、といった具合に。

こうした過去と今日がやや脈絡なく混ざりあっていく時代の気分の中で、
その状態を的確に表現した音楽が登場します。
サニーデイ・サービスの『東京』です。

メジャーでのファーストアルバム『若者たち』で、
まさにはっぴいえんどを連想させるフォークロックを展開した彼ら。
次作の『東京』では、そのサウンドから脳裏に広がる情景が、
より緻密に、よりノスタルジックになっているように感じられました。

後日、フロントマンである曽我部恵一さんにインタビューする機会がありました。
その時彼は、自分ははっぴいえんどや「昭和」という時代を
殊更意識したわけではない、と語っていました。
むしろ60〜70年代の英米のフォークや
ロックの影響のほうが大きいかもしれないとも。
それはまさに、時代性とは無関係に、
マーケットに並ぶ音源すべてに触れ得る世代ならでは感覚であり、
それが素直に表れたのが彼らの音楽なのだなと、当時得心しました。
決していわゆるレトロ、意図的な懐古ではないのです。
だからこそ、90年代の若者の心に響いたともいえるでしょう。

過去に流行った音楽を反射的に「ダサイ」「古い」と思ってしまう
バブル世代の自分にとっては、そうしたフラットに音楽を享受できる感覚は、
うらやましくもありました。
ただその一方で、音楽を「新しさ」や「進歩」といった価値観で語るのは、
もはや難しいのかもしれないと感じてもいました。
『東京』のアコースティックで美しい世界に魅せられる傍ら、
テクノの音源を渉猟していたのは、
どこかでまだ「新しさ」にこだわっていたのだなと、今になってわかります。

文=本誌音楽担当S



「恋に落ちたら」サニーデイ・サービス

拍手する
posted by esky復刊応援コミッティ at 08:17 | Comment(0) | TrackBack(0) | 裏Esky Music/レビュー回顧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

認証コード: [必須入力]


※画像の中の文字を半角で入力してください。
※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

この記事へのトラックバック
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。