7月28日発売の9月号で休刊するとのニュースがありました。
広告収入の落ち込みが原因とのことです。
それにしても休刊のニュースに必ずついてまわるこの理由、
もう聞き飽きた感があります。
『エスクァイア日本版』の版元だったエスクァイア マガジン ジャパンも含め、
雑誌の休刊を発表した各社では、台所事情や思惑、背景も異なるでしょう。
しかし、広告収入の減少が休刊の原因のひとつとなっていることは、共通のようです。
商業誌においては、収入源の重きを広告収入が賄うという仕組みが
ある種の“常識”として横たわっています。
しかしもはや、その仕組みは破綻しかけています。
ここ数年間の雑誌の休刊ラッシュは、
いつしかできていた雑誌の世界の“常識”が非常にモロく、
その上にあぐらをかいていた出版各社の
時代に対応する速度も大変に遅かったことを浮き彫りにしています。
これは雑誌づくりの現場で日々、とくに問題意識も持たず、
既存の仕組みの上で仕事をしていただけの我々編集者にも問題がありました。
ただ、今そのことに気付くことができたのは、実は幸運なのかもしれません。
雑誌をこれからやり直すということは、
収益の仕組みを改めて考え、新たに構築してゆける好機ですから。
『エスクァイア日本版』の復刊は、
そうした新しい考えがあってこそ、実現するのかもしれません。
また、それなくしては意味がないのかもしれません。
一方、書籍の分野でも最近、新しい動きがありました。
「返本減らせ新作戦」という見出しが
朝日新聞の朝刊一面に踊ったのは6/22のこと。
小学館、講談社、筑摩書房など10社が、
新しい販売方法「責任販売制」に乗り出したという記事です。
少し抜粋すると、
“(責任販売制は)
定価に占める書店の取り分を現行の22~23%から35%に上げる代わりに、
返品する際の負担を書店に求める制度だ。
出版不況の中、長年の懸案だった4割に及ぶ返品率を改善する狙いがある。”
この新システム「責任販売制」に対して、
これまで広くとられてきたのは「委託販売制」。
「委託販売制」では、書店は売れ残った本を出版社に返品する際、
仕入れ値と同額で引き取ってもらえる仕組み。
さまざまな本が店頭に並べられる一方で、
出版社の負担が大きいとも言われる制度です。
ちなみに「委託販売制」における書店の仕入れ値は、
定価の77~78%で、定価との差額(22~23%)が書店の粗利益に。
これが「責任販売制」では書店の粗利益が35%まで上がるものの、
出版社は返品を定価の30〜35%程度の額でしか引き取らないそうです。
出版社としては“買い戻し額は安く”、
書店としては“1冊の取り分多く”
というのが「責任販売制」のあらましです。
“出版社の在庫を管理する倉庫会社「昭和図書」の大竹靖夫社長によると、
08年の出版社への返品はコミックスなども含めて約8億7千万冊。
4分の1は再出荷もされずに断裁処分され、
損失額は年間約1760億円になるという。”(記事より一部抜粋)
こうして数字で見るともったいないけど、
その前にちゃんと売れるものを作らないといけないですね。
上記3社のほかに
河出書房新社、青弓社、中央公論新社、二玄社、早川書房、
平凡社、ポット出版の計10社が共同で
書店に「責任販売制」を働きかけるそうです。
“流通革命”という文字も踊るこんなニュースさえ
遅々とした動きに見えてしまうのは、気のせいでしょうか。
ただ、出版にまつわるいろんな仕組みを
見直す時期に来ているのは確かなようです。
文=瀬尾英男(『エスクァイア日本版』復刊コミッティ)
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