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2009年07月13日

レビュー回顧〜手元に残ったCDについて その6

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元『エスクァイア日本版』音楽担当が綴る、レビュー回顧。
第6回はサザン・カルチャー・オン・ザ・スキッズの
『ダート・トラック・デイト』です。


聴かせて楽しませる技術。

ここ最近では、CD店店頭に
「AMERICANA」という名称のコーナーが見られるようになりました。
もともとはカントリーから派生した音楽についた名前だそうですが、
コーナーにはカントリーというには、オルタナティヴだったり、
よりフォーキーだったりと、結構さまざまなテイストの音源が並んでいます。
いくつか聴くと、アメリカのカントリーサイドの情景が、
しかもそれぞれ違った様子で眼前に(耳前に?)浮かび上がるようです。
昔ながらのカントリーが、ノーマン・ロックウェルの絵のような
「古き良き」ノスタルジアを描いているとするなら、
アメリカーナは、例えばロバート・フランク、
時にはダイアン・アーバスの写真のような、
苦みを備えたヴィジョンを持っているといえるでしょう。

そんなアメリカならでは、かつフレッシュな音楽を聴いていると、
過去にもそうした経験をしたことが思い出されます。
’96年の2月号のレビューで取り上げた
サザン・カルチャー・オン・ザ・スキッズ(SCOTS)
『ダート・トラック・デイト』がそれ。
カントリーの音感に、ドライヴ感のあるリズム。
当時はB-52’s的なサウンドなどと思っていましたが、
今改めて聴くと、実はオーセンティックな音づくりがベースであることがわかります。
強いグルーヴは演奏自体から生み出されているものなのです。
それは例えば『パルプ・フィクション』に使われリバイバルヒットした
ディック・デイル&デルトーンズの「ミザルー」にも通じるところがあります。

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2009年06月04日

レビュー回顧〜手元に残ったCDについて その5

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『エスクァイア日本版』音楽担当が綴る、レビュー回顧。
弟5回はサニーデイ・サービスの『東京』です。


意図しないノスタルジック。

現在ではもうチェーン店「エクセシオール・カフェ」になってしまっていますが、
渋谷駅から代官山方面へ抜ける途中、246を横断する歩道橋を下りたあたりに、
かつて「マックスロード」という喫茶店がありました。
音楽ライターと打ち合わせをセッティングしようとすると、
「じゃあマックスロードで」と当たり前にその名が挙がる、そんな場所でした。
松本隆がそこで詞を書いていた、そんな逸話も聞こえてきました。

渋谷系という、実態はかなり曖昧ながらも強度があった90年代半ばの音楽流行には、
ポップスマニア的視点から、日本の過去の音楽に注目する流れがありました。
はっぴいえんど、シュガーベイブ、大滝詠一、細野晴臣、山下達郎。
70年代に生み出された彼らの音楽は、
当時の彼らが範とした洋楽音源に親しむようになったことで、
再度その魅力が認められるようになったわけです。
そしてそれらの音楽は、時間を超えて、街の情景の形成要素にもなりました。
例えばマックスロードでお茶をする自分の頭の中には、
「風をあつめて」が流れる、といった具合に。

こうした過去と今日がやや脈絡なく混ざりあっていく時代の気分の中で、
その状態を的確に表現した音楽が登場します。
サニーデイ・サービスの『東京』です。

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2009年05月21日

レビュー回顧〜手元に残ったCDについて その4

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『エスクァイア日本版』音楽担当が綴る、レビュー回顧。
弟4回はソプラノ歌手、キャスリーン・バトルの『ソー・メニー・スターズ』です。


音楽を「聴くこと」の基準とは。

『エスクァイア日本版』には、さまざまなジャンルの音源が届きます。
今日においては、音楽の発表の場はメジャーレーベルのCDに限らず、
インディーレーベルやアーティスト本人によるサイト、
またはmyspaceなどと広がっていますが、
’90年代後半はまだまだレコード会社がその中心的役割を果たしていました。
ほぼ毎日のようにレコード会社のプロモーターの方が来社して、
カセットテープのサンプル音源を幾つも置いていきます。
机の上にはあっという間にテープの壁が出来てしまいました。
それを何本かずつ家に持ち帰り、聴くことが日課となりました。

前任の音楽担当N氏の意向もあって、本誌のレビューで紹介する音楽は、
ジャンルを問わないことが不文律としてありました。
ロックやポップスがもちろん多いのですが、エスクァイア的音楽でもあるジャズ、
さらにはクラシックや現代音楽、民族音楽からクラブミュージックまで、
守備すべき範囲は実に幅広い。わけがわからないまま資料とにらめっこしながら、
恐る恐る触れる音楽が半分以上でした。中でも最も不案内だったのが、
クラシック音楽でした。

そんな戸惑いの時期に出合い、その後も聴き続けることになったのが、
今回挙げるキャスリーン・バトルの『ソー・メニー・スターズ』です。
黒人のソプラノ歌手として、オペラやクラシック音楽の分野で活躍するバトルが、
自ら企画したアルバム。そこに収められているのは、
「ねむれねむれ」や「家路」といった童謡とも呼べる親しみ深いメロディです。
タイトル曲はなんとセルジオ・メンデスのもの。
それらをジャズのミュージシャンたちの演奏とともに、
コロラトゥーラを交えながら丁寧に歌っています。

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posted by esky復刊応援コミッティ at 14:37 | Comment(0) | TrackBack(0) | 裏Esky Music/レビュー回顧 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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